オムニバス・レコード

不特定多数の執筆者による、無記名ディスクレビューブログです。執筆者の数はネズミ算式に増えていくため、ブログ開設者も執筆者の全容を把握していません。

Many Shapes / Taiko Super Kicks

 

Many Shapes

 

2015年末に出た1stフルアルバム。その前に出しているのはミニだけ。

 
出てきた当初から、ベルベット・アンダーグラウンドとかペイヴメントとかヨ・ラ・テンゴと比較されがちで、実際「オルタナをストレートに継承した」のはその通りのバンドではあるけど、じっくり聴いてみるとそれだけではない。どういう詞を書くかじゃなくて、日本語自体の聞こえがどういうものかを考えて、詞と、テンポとかサウンドとのバランスが取られている。だからか、ギター二本ともの音圧が強い時も、総合的には少し丸く聴こえるし、べたべたした「踊れる」感じがしなくて、響きが清冽。
上で挙げたベルベッツとかにある「抜けた」感じというよりも、もっと意識的に丹念に「抜いた」痕跡があって、それなのに、オルタナっぽい大雑把さからくる旨味が殺されてない。むしろ「抜いた」結果として、味のあるデッドスペースが出来ている。
そういう意味で、何と言うか寺っぽい。雰囲気が石庭に似ている。寺というのも飛鳥時代とかに中国を模倣して確立していった建築だが、日本における仏教の変形と流行り廃りによって新様式ができていったわけで、USロックの乾燥感とか開放的な響きとかのような、いい感じのだらしなさからくる快楽の模倣ではなく、几帳面に「抜く」ことに日本人としての(感覚を活かした)音楽の可能性があると思う。「寺、別に、塔なくても良くない?」みたいな。
日本最古レベルの寺である飛鳥寺とかもカッコイイはカッコイイけど、それはビートルズが「白人なのにロックやってる」という空気のもとチャック・ベリーをカバーして、ロックンロールなのにスキッとしててカッコイイみたいな理屈であって、現代的な感覚で見てしまうと、どうしても枯山水とかの方が寺の静謐性を表現するようで、例えば広告とかにも使われるし、「やっぱサージェントペパーズはすごい」みたいに語られる。模倣でカッコイイのはパイオニアだけということは言わずもがなでもあるし。
そういう意味では、Taikoは新しい寺を模索してるという感じがして、すごく好きだ。