オムニバス・レコード

不特定多数の執筆者による、無記名ディスクレビューブログです。執筆者の数はネズミ算式に増えていくため、ブログ開設者も執筆者の全容を把握していません。

SSWB / D.A.N.

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東京拠点の3ピース・バンド。90年代のトリップホップや地下系クラブミュージックに軸足を置く音楽性と、都会的で洗練されたイメージブランディングを高次に融合させ、ファースト・フルアルバム『D.A.N.』はライトリスナーから大御所ミュージシャンまで多くの音楽ファンのハートを掴んだ。その余韻も冷めないうちに、シングル『SSWB』が2016.12.23配信開始した。

自主レーベル名でもある「Super Shy Without Beer」の頭文字を取った表題曲は8分近い長尺曲。『Stairway to Heaven』がほぼ完奏できる長さではあるものの、どうやら大作志向ではなく非常に軽やか且つスムーズな喉ごしで、繰返し聴いても飽きがこない。ミニマル・テクノを参照したループするベースラインを基調としながら、小林うてなが打つスティールパンの音色や、イーブンに刻み続けるハットが、いつまでも浮かれた心地でいさせてくれる。熱とアルコールを帯びた夜の空気を今にも触れられそうな位だ。

星空に打ち上がるような高揚感も、誰かの視線を気にするような背徳感も、作詞/ヴォーカルの櫻木大悟はスチャダラパーの名曲の一節を拝借し「それは夏のせいさ」とあしらう。しかし私達はもう知っている――そんな夜のぬるい風を、秋だろうと冬だろうと何度となく心身に覚える人生であると。そのときの決まりの悪さは気温と反比例するらしい。櫻木は直射日光を避けながら夏を描くのが巧い。

これまで表題曲『SSWB』 はこの配信シングルを含め異なる3形態でリリースされている。配信シングルだと、アルバム収録曲の透明度をぐんと高めたような、D.A.N.と親交の深いAlbino Soundによる美しいリミックス2曲とのコンパイル。なお本作における、エンジニアがAOKI takamasa、MV監督が石田悠介、という布陣はAlbino Soundのファースト・アルバム『Cloud Sports』を支えた面子である。